RHS Gargan Wisley
イギリスにRHS(Royal Horticultural Society)というチャリティ団体があります。日本名は「英国王立園芸協会」で、創立は1804年。今年で215年の歴史を持つ、園芸とガーデニングを人々に推奨する事を目的とした慈善団体です。王立という名前が付いているとおり、総裁はエリザベス女王陛下です。
RHSは現在会員が約50万人で、英国内に5箇所の広大な庭園の所有と運営、ロンドンに植物に関する古文書を含む書籍を収納した図書館を持っています。
チェルシーフラワーショー
活動としては、フラワーショーと呼ばれる催しを国内各地で年に14回程開催、毎月会員に向けて発送される雑誌の編集、発行。(下の写真は2019年6月号の表紙です。)
「ブリテン イン ブルーム」という各地の自治体ごとに園芸家によるチームを作って、その地域の緑や花を増やす緑化運動の競技会など数々の催しを行っています。そのほかに、学校に行って子供達に植物やガーデニングの紹介や体験をするチームを派遣したり、公式ガーデンでは家庭のガーデニングからプロの園芸家の養成をするなど色々なコースもあり、とにかく園芸に関して出来る事は全部やっているという感じの組織です。
フラワーショーとは、園芸家の発表会のような感じで、色んな庭の展示をしたり、新種改良された花などの展示、販売などが行われます。BBCの人気ガーデニング番組「ガーディナーズ ワールド」に出ているような、有名なガーデナー(庭師)が呼ばれて公演や実演などもします。一軒家の家には必ず庭が付いていてガーデニングが盛んなお国柄ですから、ガーディナー ワールド出演している彼等はとても有名で人気があり、どこに行っても大スター扱いです。
一番有名なフラワーショーは、毎年5月にロンドンで行われる「チェルシーフラワーショー」で、2013年にショーが始まって100周年のお祝いをしていました。チェルシーは、ロンドンでの女王陛下の住居兼オフィスでもあるバッキンガム宮殿やケンジントン宮殿にほど近い場所にあって、セレブや世界中のお金持ちがロンドンの家を持っているとても上品で上等な地域です。
ウィズリーとは
今回、そのRHSが持っている公式ガーデンで、一番歴史が古く、面積も大きい「イギリス人に最も愛されている庭」と呼ばれている「ウィズリー」をご紹介します。
ウィズリーは100約100㎡の広大な敷地にあり、世界的最高規模といわれている植物コレクションを持っています。それぞれに適した環境で展示されていて、まさにガーディナーの聖地です。庭仕事が好きな人、園芸に携わっている人には必見の場所です。
毎年ここに訪れる人は100万人、ガードナー75人にガードナーコースの生徒25人、園内の運営を支えるボランティア会員は常に100人いて、世界中から訪れる人達を待っています。
ウィズリーがあるのは、グレーターロンドンと言われるロンドン圏内の周りをぐるりと囲んでいるM25(モーターウェイ25番、高速道路です。)の丁度外側、イングランドの庭と呼ばれているサリー地域の街、ウォーキングにあります。
訪れたのは、6月の日曜日の午前11時ごろでした。M25の最寄の出口から出ると、3-5分で入り口に着きました。ガーデンのオープンは9時なので、私達が着いた時には既に第1、2駐車場は満車、観光バス用の駐車場にもバスが4〜5台停まっていました。私達は、あちこちに立っているスタッフに誘導されて第3駐車場に駐車しました。
そこから入口まで徒歩で向かいます。一番花が咲いてる時期の日曜日なので、大勢の人が来ていました。
ウィズリーの営業時間
夏時間中は月曜日から金曜日は朝10時から午後6時まで、土日と祝日は朝9時から午後6時まで、冬時間中月曜日から金曜日は朝10時から午後4時半まで、土日と祝日は朝9時から午後4時半までで、最終入場は閉まる1時間前までです。12月25日のクリスマスの日だけがお休みで、それ以外は開いています。
ウィズリーの入り口に来ました。ゲートは左右両方にあって、右側は一般の入場者用で真ん中のチケット売り場で入園料(大人1人£14.50、約2000円)を払って入場します。
左側はRHSの会員専用の入り口で、会員カードのバーコードをスキャンしてもらって入場します。
これが私のRSH会員カードです。
1年間毎の更新で、1人だと£47.25(約6500円)、2人だと£69(約9500円)です。(2019年現在)両方ともメンバー以外に、ゲスト1人または子供が2人〜4人(会員2人の場合)まで入場出来ます。
RHSには、提携しているパートナーガーデンという、その地域や個人で造ったガーデンが英国内に200箇所以上あって、そこにも入場が可能です。RHS主催のフラワーショーのチケットも少し安い会員価格で購入出来ますし、メンバーズ ディという初日の会員だけ入場出来る日のチケットも購入出来ます。
気温は19℃、暑すぎず、寒すぎないとても良いお天気です。早速、歩いてみます。
中は凄く広いです!1日ではとっても周りきれません。
まず、あるのがチューダー調の古い建物です。ラボラトリーと呼ばれていて、植物の研究、実験などが行われているそうです。周りの風景に溶け込む素敵な建物です。
そのラボラトリーの前に、睡蓮の池があります。1960年代にウィズリーの中に水路が作られて、その時に造られた睡蓮のコレクションの池です。
展示されている植物には全て名前、種別などが書かれた札がついています。
ウォール ガーデン
睡蓮の池の後ろにあったウォール ガーデンというお庭は、膝から腰ぐらいの高さの木だけで造ったお庭でした。花が咲くものを全く使っていない、と言う珍しいお庭でした。でも、緑の濃淡や赤味のある木がアクセントになっていました。
ウィズリーで1番最初に造られた庭「オーク ウッド」
ウィズリーで1番最初に造られた庭「オーク ウッド」にあったとても大きな楢の木です。
オークは、どんぐりが出来る木として有名です。イギリス人はオークの木が大好きです。公園や庭に植えたりする他に、硬くて丈夫な木質を利用した家具も大人気です。
世界中から集められた植物があるので、初めて見たものも沢山ありました。草木はとても良い状態で管理されていて、生き生きしていました。
グラス ハウス
どんどん奥に歩いていくと、 周りに池のある大きな温室がありました。面積テニスコート10面分、高さ12メートルの「グラス ハウス」です。
この温室のオープニングセレモニーは、2007年6月26日エリザベス女王陛下とエジンバラ公が来られて行われたようです。
中は乾いている砂漠気候と、蒸し暑い亜熱帯気候、2種類のゾーンに分かれています。
明るい色の花が沢山咲いていました。
小さな滝もあります。
天井に蚊取り線香のような形のものが取り付けてありますが、これが室内の空気を温めているヒーターのようです。
色んな形のサボテンです。とても大きく、背が高いです。
小さな可愛い花が咲いているものもありました。
亜熱帯気候ゾーンです。ここは蒸し暑くしてあって、ちょうど日本の夏のような感じです。(笑)
水色の珍しい花です。変わった形の花や木が沢山ありました。
温室の外にも花が一杯です。やっぱり6月は良いですね。梅雨もなく、日も長く、爽やかな天候の6月のイングランドお勧めです。
随分歩いたので、グラスハウスの横にあるカフェでお昼にしました。
「グラスハウス カフェ」です。
ウィズリーは、とても大きいのでカフェやレストランも6箇所あります。その他に15〜50人のグループの為に、朝ごはんからランチ、アフタヌーンティーなどが頂ける「テラス ルーム」という貸切専用のお部屋もあります。ここの利用は事前に予約が必要です。
セルフサービス式になっています。
室内の席もありますが、6月のお天気の良い日にはやっぱり外の席が人気です。
ウィズリーの中のカフェやレストランでは、ウィズリーで作られた野菜や果物を使って商品が作られています。その他の材料も、なるべく地場産のものを使っているそうです。
私達は、お馴染みイギリスの昼ごはんメニューのジャケットポテトのチリビーフ添え、赤キャベツのコールスロー、ウィズリー人参たっぷりのサンドウィッチ、アプリコットのケーキを買いました。ジュースだけは、イタリア製です。人参のサンドウィッチは、中身はほぼ塩もみした人参だけだったのに、とても美味しかったです!びっくりです。全部、塩やお砂糖が控えめで、素材の味を生かした味付けでした。ご馳走さまでした!
みんなの椅子の間を歩いてお昼ご飯をもらおうとしている、ちゃっかりダックが足元をヨチヨチ歩いています。グラスハウスの横の池から来たようです。
カフェを出て、有名なロックガーデンに向かいます。
ロックガーデンとは、石や岩を使ってあるお庭のことです。
ここのロックガーデンは1919年に造られましたが、RHS200周年記念事業として新しい石組みと植載プロジェクトが日本人造園家 福原 成雄氏によって行われました。新しいロックガーデンのテーマは「日本の風景」で、オープニングセレモニーは、2005年3月24日でした。
ロックガーデンは斜面に造られていて、高い場所に滝が作ってあり、その水が下に流れて1番低い場所にある池に注ぐようになっています。
シャクナゲ、ツツジ、もみじなど日本らしい植物が植えられていました。イギリスの気候を考慮して、東北、北海道など北の地域に自生している植物が植えられているそうです。
もみじはこちらでも庭木としてとても人気があって、ガーデンセンターに行くと特別にコーナーが設けてあるぐらいです。大きさも庭にちょうど良く、赤い色がお庭のアクセントになるからでしょうか?
ロックガーデンにも、大きなどんぐりの木がありました。
高いところから、下にある池を見下ろした写真です。
盆栽ウォーク
ロックガーデンを出て斜面を登っていくと、盆栽ばかりを集めた「盆栽ウォーク」という小道がありました。
平たくて、そんなに大きくない鉢に植えられているのに、まるで大きな木のような姿です。
小さな松ぼっくりがなっている松の木や
小さなりんごがなっている木など
まるで大きな木のような姿です。
「Bonsai」という言葉はこちらでも園芸に興味がある人にはお馴染みの言葉です。
日本にいる時には、盆栽なんてお年寄りの趣味の世界だと思っていましたが、なかなか凄いものだなぁ、と思いました。
それから世界中から集めた、林檎や梨、さくらんぼ、プラムなどの果樹園コレクションを見て歩いていたら、向こうからとても良い匂いが……。
The Honest sausage 正直なソーセージ
コンサバトリー(ガラス張りのガーデンルーム)の周りに人が集まっています。
行ってみると「The Honest sausage 正直なソーセージ」という4〜10月の夏時間の時期だけ限定で開いているホットドッグ屋さんでした。地元の広い敷地の農場の屋外で、放し飼いで飼われた豚の肉(フリーレインジと言います)を使って手作りで作った、ソーセージとベーコンを使っているそうです。
メニューはソーセージ入り、ベーコン入り、ソーセージとベーコン入りの3種類でそれに炒めた玉ねぎがたっぷり入っています。バンズ(ハンバーガー用パン)は、今流行りのブリオッシュ生地のものでした。こんがり焼けた大きなイングリッシュ ソーセージが2本も入ってます!
今さっきランチを食べたのに…という事で、2人で半分こしました。ハインツのトマトケチャップとマスタードをたっぷり付けていただきました。1つ£5.25(約720円)です。美味しかったです。
こういうRHSやナショナルトラストなどの施設は、会員の会費と寄付と施設内の販売利益によって運営されていますので、少し高いな、と思ってもなるべく利用する事にしています。
薔薇の庭園もありました。
薔薇って、やっぱり花の女王さまだよなぁ、と思います。姿、香り共に素晴らしいです。
そろそろ帰る時間かな、と思って歩いていると、
夢のような素敵な箱庭がありました!
イングリッシュ ガーデンの真骨頂のようなデザインです。
隣のお庭には、可愛いパイナップルの噴水が。南国風庭園かな?
急に曇り空になって、暗くなってきたので、出口に向かいます。
「イングランドのお天気は、1日の中に四季がある。」と言われています。晴れたり、曇ったり、急に雨が降ったり、また晴れたりと、とても変わりやすいのが特徴です。雨も降りますが、ずっと降っている訳ではなく、すぐ止むので、殆どの人は傘は使わずフードの付いたジャケットを着て、それで済ます事が多いです。
出口の手前に、ショップもあります。
今年、2019年のチェルシーフラワーショーのオリジナルグッズもありました。
私の大好きな陶器の街ストークオン トレントで作られた、エマ ブリッジウォーターの夏らしいトマトやコジェット(ズッキーニの英語名です)などの野菜柄の食器。
ビスケットやチョコレートなどもお土産にピッタリの可愛い缶や箱に入ったものが沢山ありました。
植物柄の文房具や
イングリッシュローズの香りのキャンドル、ローション、部屋の芳香剤などもありました。
色んなものが沢山あったので、お買い物の好きな人はここだけでも1時間ぐらいかかってしまうかもしれません。
車のパーキングに近い場所に、新しい大きな建物が完成していました。ここは、ショップ、レストラン、プラントセンターが入るそうです。私達が行った次の日にオープン予定でした。入り口もここにあるそうなので、今度来た時は入り口の場所も変わるのでしょうか?
ウィズリーはとても広いので、今日ご紹介したのはほんの一部です。ガーデニングが好きではない人も楽しめる素晴らしい施設です。
世界的に有名なイングリッシュガーデンを是非見に来て、楽しい一日を過ごして下さい。
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